「逃げ恥」の愛称で話題になったドラマ「逃げるが恥だが役に立つ」の影響から、契約結婚という一風変わった結婚の形がひそかに注目を集めています。
契約結婚とは、一体どんな結婚の形なのでしょうか?実態をあまりよく知らない人も多いはず。
そこで本記事では契約結婚の概要、メリットとデメリットを詳しくご紹介します。
目次
契約結婚とは
契約結婚とは、感情まかせや勢いによるものではなく、あらかじめ婚姻生活のあれこれを決めておくビジネスライクな面の強い結婚です。
ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」通称「逃げ恥」で流行った、ちょっと変わった形の結婚スタイルです。
結婚をする前に結婚生活を送る上で様々な事柄について書面で決めておきます。
たとえば、
- 結婚後仕事を続けるか
- 家事分担の割合
- 子どもの有無や育て方、タイミング
- お金の管理
- 離婚の条件
などについて契約を結ぶのです。
契約結婚は必ずしも『恋愛感情がない結婚』『ドライで割り切った結婚』という意味ではありません。
事実婚・偽装結婚との違い
事実婚や偽装結婚は契約結婚と混同されてしまいがちですが、これらは別物です。
事実婚とは、入籍をしていないけれど「同居している」「家計を1つにしている」など事実上夫婦として暮らしているスタイルです。
契約結婚であっても、婚姻届けを提出しなければ事実婚になります。
偽装婚とは「お互いに婚姻意思がないのに婚姻をすること」です。
契約結婚はお互いに婚姻の意思があるのでこれには当たりません。戸籍を書き換えたり、不正ビザを取得したり、借金目的で苗字を変えたりすることです。
犯罪行為とみなされることもあります。絶対にやってはいけません。
契約結婚のメリット
契約結婚には、実は様々なメリットがあります。安心感や安定感を持て、不安を最小限に抑えて結婚生活を送れるのです。
ここでは、契約結婚のメリットについて紹介していきます。
口約束を曖昧にしない
ほとんどのカップルは結婚前に様々な約束をします。しかし、口約束程度のものだと結婚後履行されなかったり覆されたりしてしまうことも少なくありません。
しかし、契約結婚はしっかりと書面で正式に契約を結んで結婚することを言います。
口約束とは違って、約束を曖昧にさせたりはぐらかされたりすることなく、結婚生活を送りやすくなります。
離婚するときにスムーズ
離婚は結婚の5倍のエネルギーを使うとも言われています。
結婚は新居決めから家具の配置までいろいろと大変ですが、離婚するとなればさらにその比ではないのです。
しかし、あらかじめ離婚をする際の条件を決めておくことで時間がかかってしまったり泥沼になったりしにくくなります。
スムーズに別れられて、新しい人生を踏み出しやすくなるでしょう。
税金的優遇が受けられる
婚姻届けを出すことにより、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を受けられます。
夫婦どちらかの年収が一定以下ならば片方の税金面が有利になったり、年金や健康保険などの優遇を受けたりできるのです。
さらに勤め先によっては配偶者手当が支給されたり、寮へ優先的には入れたりする場合もあります。
恋愛とは分けて関係を築ける
契約結婚の場合はお互いの利害が一致していれば恋愛関係でなかったり、恋愛感情で結ばれていなかったりしても契約を結べます。
契約結婚の契約内容に「お互いの自由恋愛を認める」としておけば、婚姻関係の相手以外とも恋愛ができます。
契約結婚のデメリット
契約結婚は、いいことばかりではありません。
契約結婚をしようとする場合、以下のことに注意しておきましょう。
周りに理解されにくい
契約結婚の認知度は高いとは言えません。
恋愛感情がない状態で契約結婚をしたり、結婚前にすでに離婚の条件を事細かに決めておいたりしていることを親や友達に説明してもなかなか理解されないでしょう。
契約結婚については婚姻関係を結ぶ2人が納得していればいいことで、あまり周囲に理解を求めすぎるのはおすすめできません。
外野からいろいろ言われてしまい、結婚自体が頓挫してしまう可能性があります。
関係が安定していない
契約とは双方の利害が一致しているからこそ、成り立つものです。
逆に言えばお互いの利害が一致しなくなったり条件が合わなくなったりしてしまった場合、突然の契約解消も十分にありえます。
恋愛感情のある結婚ならば、たとえば片方が失業したり病気になったりしても簡単に見放すことはないかもしれません。
しかし、利害の一致によるビジネスライクな契約結婚ならば即離婚もあり得ます。
あらかじめ契約内容に契約期間を入れておくようにしておくと、「突然の契約破棄」を回避できるでしょう。
婚前契約書とは
婚前契約書とは契約結婚に際し、結婚後どのような生活を送るのかなどの取り決めや条件を明示したものです。
夫婦としてどのように生活していくかを示す、非常に重要なものになります。
口約束では証拠が残らず、もめた時に泥沼化しやすいので、必ず「書面」として残しましょう。
では、どのように書類を作成したらいいのでしょうか?ここからは作り方をお伝えします。
婚前契約書の作り方
婚前契約書の正式な書式などはありません。
しかし、書式のサンプルやテンプレートなどはいくつかあるので参考にしたり、使ったりすると漏れがなく、便利です。
また、双方が同意して契約すればなんでもアリと言うわけではありません。法律上問題があったり内容が不十分だと無効やトラブルの元になったりします。
そのため、できる限り弁護士や行政書士に依頼して作成してもらいましょう。
多少費用はかかりますが、たいてい婚前契約書が一番効力を発揮するのは契約結婚がうまくいかなくなった時です。
双方が不満を持っていたり心が離れていたりする時なので、多少費用をかけたとしても、法的な効力の強い婚前契約書を作っておくとよいでしょう。
婚前契約書に記載する内容
婚前契約書にはどんなことを記載するべきかについて紹介します。最低限、以下のことについて取り決めておくようにしましょう。
家事分担について
家事の分担は結婚生活においてとても揉めやすいのであらかじめ決めておきましょう。
炊事、洗濯、掃除、ゴミ出し、自治会の出席、買い物など生活していくうえでさまざまな家事があります。
いつ、だれがどのレベルまでやるかを窮屈になり過ぎない程度にきっちりと決めておくと良いでしょう。
お金のこと
生活していくうえでお金の管理はとても重要です。
財布を一緒にするのか、別にするのか、生活費をどのように負担するのかについて決めておきましょう。
例えば家賃の支払いは夫、光熱費は妻、毎月〇万円は共有財産として貯金するかなどです。
子供のこと
子どもは授かりものです。予定通りに妊娠・出産ができるとは限りません。
しかし、産むか産まないか、何人作るか、いつ作るかなどは大まかに決めておきましょう。
子どもの有無は婚姻生活に大きな影響を与えます。
親や親族のこと
結婚は当人同士だけの問題ではありません。家と家をつなぐものです。
親との同居や将来の介護、冠婚葬祭時の親戚の集まりに行くのか、お金はどちらが出すのかなどについて決めておきましょう。
契約期間
契約期間は決めてもいいですし、決めなくてもかまいません。たとえば2年契約を結び、2年後に更新するかどうかを決めるという方法もアリです。
家事分担やお金についてはライフスタイルが変わったりどちらかに負担が偏ったり不満があったりするのならばこまめに見直すとスムーズな婚姻生活を送れるでしょう。
身体の関係について
結婚後のセックスの有無についても決めておくとよいでしょう。
双方が同意しているのならば、なしでもかまいません。
ありの場合も頻度などを決めておく場合があります。
DVやハラスメント
DVやハラスメントがあること前提で結婚する人はあまりいません。
しかし、結婚してみたら…ということは多々あります。そして、揉めることが多いです。
DVがあったら即離婚、慰謝料〇〇万円などと決めておくとよいでしょう。
離婚について
DVや不倫、内緒で多額の借金を作ったのであれば即離婚をする、慰謝料や養育費の金額、親権はどちららが持つかなどを先に決めておくと万が一離婚になった際にスムーズにことを運べます。
契約結婚の終わらせ方
契約とは、お互いに利益があるからこそ有効です。
- 利益を感じられなくなった
- 契約が満期になって継続の意思がない
- 契約を反故にされた
などの場合、契約結婚を終わらせる時です。
契約結婚の場合も、一般的な離婚とほぼ変わりません。
婚姻届を提出していた場合は、離婚届を提出します。
事実婚のように婚姻届を提出していない場合は、法律上の手続きはありません。
婚前契約書に基づき財産分与や養育費の取り決め、慰謝料の支払いなどを行い、離婚しましょう。
契約結婚の注意点
契約結婚の場合、必ずしも恋愛感情を双方が持っている必要はありません。
しかし、夫婦として一緒に生活していることが最低条件です。
正当な理由がないのに同居していないと、偽装結婚とみなされてしまうことがあります。
婚前契約で恋愛の自由を認め合っている場合でも、堂々と恋愛をしていると世間の目もあり、厄介なことになりやすいです。
契約違反があった時は?
なんらかの契約違反があった場合、婚前契約書があれば相手に慰謝料当を請求できます。
それでも違反を改めず慰謝料も払わない場合、裁判も可能です。
契約結婚した人のリアル事例
実際に契約結婚(婚前契約)した人たちは、結婚にあたりどのような取り決めをしているのでしょうか。
ここでは、契約結婚した男女の事例を一部紹介していきます。
家計管理を明確化(30代男女/初婚)
- 夫婦の財布は一つにすること
- 家計管理は妻、夫はお小遣い制とすること
結婚後の家計管理は夫婦によっていろいろな形がありますが、このご夫婦は「家計管理は妻にお願いしたい」という夫の要望で上記の取り決めが行われています。
離婚後の子どもとの面会交流を約束(フランス人男性&日本人女性)
- 離婚後の父親と子どもとの面会交流を保証すること
- 別居して子どもと離れて暮らすことになっても子どもと定期的に会えるよう取り計らうこと
日本では離婚後の子どもの親権はほとんどが母親に渡ります。
「離婚したら子供と会えなくなる…」と不安に思い、事前に婚前契約書に子どもとの面会交流について明記しておきたいという外国人男性は珍しくありません。
養育費・遺産相続についての約束(再婚男性&初婚女性)
- 前妻との間の子どもへの養育費は、家計からではなく夫の固有資産から支払うこと
- 妻が死亡した際の遺産は、夫ではなく実子が相続すること
- 妻死亡後の遺産相続時に子どもが未成年の場合は、夫が子どもの代理人を選出、遺産相続に関する手続きと管理を行うこと
再婚で前の配偶者との間に子どもがいる場合、養育費、遺産相続に関してはしっかりと取り決めを行うことが大切です。
特に遺産相続に関しては注意が必要。
このご夫婦の場合夫が再婚者であり、妻が死亡した際の遺産の受取人を夫にすると夫が死亡した際に妻の遺産が前妻との間の子どもにも渡ってしまう可能性があります。
婚前契約書で詳細に遺産相続に関する約束事を明記しておけば、万が一妻が死亡したとしても希望通り遺産相続を行える確率は高くなるでしょう。
ただし婚前契約は遺言書としての効力はないため、婚前契約書に明記した場合でも遺言書を作成しておくのがおすすめです。
契約結婚は結婚生活の不安を取り除く手段としては有効
契約結婚をすることで、恋愛や夫婦とはこうあるべきという概念にとらわれず、双方が安心、安定した婚姻生活を送れます。
さらには、離婚の際にも非常にスムーズに事を進められるでしょう。
一方、ドラマで注目され始めたとはいえ、まだまだ契約結婚は一般的ではありません。周囲から理解を得ることは難しい場合もあります。
契約結婚をする場合は契約内容に家事、お金、子ども、親戚付き合い、離婚の条件、契約期間などについて入れておきましょう。
また、婚姻生活をしていくうえで婚前では想定していなかったことが起こる場合もあるので契約内容を適宜見直していく柔軟さも必要です。